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「うま味と香り」

何か足らない、、を解決したい。

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あっという間にもう2月。11月から「だしの化学教室」をはじめました。準備として論文読んだり実験したりを続けていたら、だんだんと「だし」とか「うまみ」に対する考え方がじぶんの中で進化ならぬ深化したのを感じました。そうしたら、なんだかグッと料理がよりもっと面白くなったんです。(深堀する方向を教室とはちょっと違うところにして)美味しさってなんだろう、ということをうまみから考えてみる、が今回のお話のテーマです。

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うま味。それは、にんげんの基礎味のひとつ。ほかは、甘味、塩味、酸味、苦味です。(基礎味としてのうまみの表記は「うま味」とのこと)

これらがほかとなにがちがうかっていうと、舌に受容体があるんですね。

ふわーっと基礎味の分子がやってきて、受容体にキャッチ!されると電子信号がビビーッと脳に伝達されて、(味がする!)とあたまで味を認識します。(例↓ 苦味の場合)

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言い換えると、違う分子がやってきても、たとえば苦味の受容体はキャッチもしないし、その分子の味をあたまで認識することができません。

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舌は基礎味の甘味、塩味、酸味、苦味、うま味以外だと味を認識できる受容体がいない、のですね(現段階の研究において。もしかしたらもっと色々な種類の受容体はあるかも、しれない)。

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(ちょほーっと脱線、香りのこと)

そうおもうと、なんだか不思議な気持ちです。なぜならもっともっと複雑な味を知ってると思うからです。ふしぎだーと思って、鼻の香りの受容体の数を調べました。

なんと、396個!見付かっているようです。

味だと思っていたほとんどは、香りなのかもしれない、と思いました。

鼻つまむと果物の違いが判別できないってよく聞きますよね。

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美味しい、とおもったとき、

うまみが強い、とか味の奥行きがある、とか言い表すことも多いですが、

「香り」、が重要なのかも、と。

香りがうまみに加わることで体感的に美味しさの深みが増す。香りは予想以上のやくわりを担っている、と思い始めました。

(香り、いったん終了)

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さて、味のこと。分子が舌の受容体にくっついて、(味!!)とあたまが認識しますね。

この分子、とっても小さな単位にならないと受容体は認識できないのです。

苦味をあえて加えたい、というシチュエーションは少ないので置いておくとして。甘味、塩味、酸味は、それぞれ砂糖、塩、酢という調味料でもうすでに小さな分子になったものを普段使用しています。「うま味」の入った食品は様々なうえに、(うまみを増やしたいけどどうしたら、、)と思うことが多いと思うので、これについてもう少し深堀りします。

「うま味」はアミノ酸の一種です(現在、グルタミン酸、というアミノ酸の受容体のみ確認されている)。アミノ酸はどこからやってきたかというと、たんぱく質です。たんぱく質はアミノ酸がたくさん連なった構成。酵素などよって、ちょきちょきと、切り落とされるとアミノ酸という小さな単位になります(分解)。

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たんぱく質がうま味の受容体の近くを通った場合と、

たんぱく質の分解物であるアミノ酸(のなかでも、グルタミン酸)がうま味の受容体の近くを通った場合。

さて、どうなるか。

後者のアミノ酸のみ、受容体はカチっとはまります。そして、(うまい!)となる。たんぱく質は大きいし形違うし認識できず。

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香りも同じことが言えます。選ばれた小さな分子だけが、鼻のなかの受容体にカチっとはまって、(あ、このかおり!)となる。

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これらを学んだ時に気付いたこと。

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(料理の味見をして、(何か、、うまみ、足らない、、)と感じたら、

小さな分子(=分解物)になっている食品を加えたらいいんだ)

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ということ。それは身近な食品でどんなものかというと、

発酵食品(塩麹、味噌、醤油、チーズ、魚醤、熟成肉、酒など)や

乾物(乾燥昆布、切り干し大根、鰹節、するめ、干物の魚など)

だなぁと。

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発酵食品や乾物になぜ、小さな分子が含まれているか。

発酵食品は、酵素や菌類によってゆっくりゆっくり組織を分解したものであり、乾物は、組織を乾燥させたものであり、こちらは乾燥による細胞等々の壊れや死後の酵素による分解がある、から。

どちらも酵素や菌を介した分解によって、アミノ酸を含む小さな分子が多数存在しており、調理において加えるとじわじわと分散することができます(スープとか)。

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それに気付いてから、

(あ、なんかうまみ足らない、、、)

に陥った時、そのスープや炒めもの、お浸しなどなどに、

シャッと乾燥昆布を入れたり、塩麹を入れたり、しています。

(ちょと脱線ですが。これもよくやっています→ たんぱく質豊富な魚や肉を長時間ゆっくり加熱することで、そこからアミノ酸をスープに引き出す。鶏肉のスープなど。魚や肉はたんぱく質だけでなくもとから小さな単位のアミノ酸も体内に存在。死後の酵素によるたんぱく質分解もあり)

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それで、ぐっと味が整ったりして。(おおおおお、、、!)てなる。

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ただ、うまみがあれば美味しいか、といったらそうでもなく。

香り、ってすごく大切だな、とおもう。

これは、発酵食品等々もあるけれど、採れたて新鮮なものだからこそ、たくさんあったりもする。(香りの分子は揮発性があるものもあり。時間が経つにつれ、香りがいなくなったりもする。あとは分解していって失活したり。)

先の話に出てきたけれど、味覚よりも多くの認識ができる香り。

たいせつな(美味しさ)の要素のひとつです。

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それを裏付けるものとして、うま味調味料を見てみたときのこと。

本だし、は、かつお風味のうま味調味料。内容物が、グルタミン酸やイノシン酸だけではなく。ここに、かつお節抽出物等々を加えていた。これは香りを加えるためだとおもうんですね(一方、味の素はグルタミン酸やイノシン酸だけで構成)。うま味成分だけだと、それっぽい美味しさはやはり再現できず。香り成分も加える。

美味しい、と感じるものに、香りは切り離せないのかも。

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そんなこんなで。

はなしがあちこちと、すみません、、

この発見があって、本当にグッとまた一段と料理が楽しく、

そして、ちょっと肩の力が抜けた。

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足らないとき、こうしたらいいかな。

がなにかあるって少しホッとする。

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